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フィールドレコーディングのススメ ※2018/7/20追記あり


2000年以降、ハンディタイプのマイク内蔵デジタルレコーダーが出てきて、手軽にフィールドレコーディングができるようになりました。僕も2004年に発売されたEDIROL R-09を買ってからというもの、いろいろなところに持ち出して、気になる音を片っ端から録音してきました。都市、山、海…心に響く音を探す散歩や旅は、半ば趣味のようになってます(笑)けど、ただの趣味ではなく、自分の音楽作品に使ったり、MA時に環境音として入れ込んだりなど、実用的な面もあるのです。

フィールドレコーディングを多用したミニアルバム『IIE 311』トレイラー

現在の機材ラインナップは前掲写真の通り。TASCAM DR-07 MKIIをメインレコーダーに据え、狙う音によってラベリアマイク(ピンマイク)のaudio-technica AT9904やバイノーラルマイクのadphox BME-200を使い分けてます。どちらもプラグインパワー対応のマイクなので手軽に扱えます。もっと本格的な機材を揃えても良いのですが、そうなるとどうしても重く、嵩張ることになるので、フットワークの軽さを重視して、このラインナップにしてます。この他にiOS用ステレオマイクを常に持ち歩いて、咄嗟の録音や演奏動画撮影などで使用してますが、それはまた別の機会に。今回は、これらを使ったフィールドレコーディングの様子を実際に録った音(24bit 96kHz 無加工/DL可)を交えてご紹介します。

 

AT9904はモノラルマイクで、スポット的に音を集音したいときに使います。僕なりの使い方としては、そのへんで拾った木の棒などの先端に取り付け、限りなく対象物に近づけて録るようにしてます。そうすると、余計な音を極力拾わずに、欲しい音だけを生々しく録れるのでオススメです。ただ、目測誤って水中ダイブなどさせないように注意しましょう(笑)あと、変則的ですが、おもちゃの聴診器のゴムホースをちょん切って、その切り口にこのマイクをねじ込み、聴診器を水中に入れて音を録ったりなど、アイディア次第でいろいろ遊べて面白いですよ(笑)

 

BME-200は前述の通りバイノーラルマイク。バイノーラル録音というのは、人間の鼓膜の位置にマイクを設置し、ヘッドフォンやイヤフォンで聴くと、非常にリアリティのある音場感を得られるステレオ録音方式のこと。その効果が最大限に発揮されると、まるで目の前で起こっている現実のことように聴こえます!本来はダミーヘッドと呼ばれる頭部模型の耳の部分にマイクを仕込んで、人体による音の回折や反射をシミュレートするものなんですが、いまではイヤフォン型の簡易バイノーラルマイクも見かけるようになりました。つまり、自分の頭をダミーヘッド代わりにするという、逆転の発想(のさらに逆?)的製品!イヤフォンのように耳に装着するだけでバイノーラル録音が楽しめます。が、手軽に使える反面、やはりダミーヘッドを使ったものよりは効果が薄いように感じますね。今回掲載したサンプルは小さな滝の前でグルグルと回って収録したものですが、前と後ろの区別が微妙で分かりづらいかもしれません。とはいえ、ダミーヘッド式のものは100万超えてたりするし、何よりこのご時世、屋外で使うにはアヤシすぎる(苦笑)このadphoxのものは価格と性能のバランスが良いのでお気に入りです。また、VRが流行りだしてるいま(2017年現在)、最も手軽に仮想現実の入り口を覗ける製品かもしれないですね。

※ヘッドフォン/イヤフォンでお聴き下さい

 

DR-07 MKII本体のマイクは可動式になっており、その形態によってXYステレオとABステレオ(上写真の状態)を選べます。指向性の軸が90度で交わるXYステレオにすると、センターの定位がハッキリとし、中抜け(中央定位の音が不明瞭になる)のないステレオ音となり、指向性軸が外側に開いたABステレオの場合は、より広がりのある音で録れるのが特徴です。特定の音を狙うならXYステレオを、その場の全体的な音を広く捉えたいならABステレオを選ぶと良いと思います。僕がピアノをステレオ録音する場合は2本の無指向性マイクをABステレオで立てることが多いのですが、このDR-07 MKIIのマイクは単一指向性なので、ABステレオだとちょっと中抜けしますね。無指向性でABステレオだったら良かったのにな…と思ったら、姉妹モデルのDR-05がそうでした(笑)使用上の注意点としては、まぁこのモデルに限ったことではありませんが、吹かれにとても弱いので、屋外ではジャマーなどのオプションを使った方が良いと思います。僕は高域の減衰を避けるために、なるべくジャマーの類は使わないようにしてますが(笑)なお、今回掲載のサンプルはABステレオで録ってます。

 

「4'33"」(演奏者自らは何も発音しない無音の音楽)で有名な現代音楽の作曲家、ジョン・ケージは「耳を開け」と言っていましたが、確かに目を閉じて周囲の音を注意深く聴いていくと、思わぬメロディ(みたいな周波数変動)やリズム(みたいな周期性)を発見したりします。そこまで感覚を研ぎ澄まさなくても、単純に心地よく感じる音というのは誰にでも心当たりがあるでしょう。そういう音をいくつ見つけられるか…。耳を開いて、ひとつひとつの音を注意深く観察する。そんな意識で音を聴くと、音に対する感性を磨くことに繋がるように思います。そうやって見つけた音を自分の音楽や映像作品に取り入れていくのはとても楽しいので、まだ未経験の方は是非トライしてみてください♪

 

2018年7月20日 追記

ビデオサロン(玄光社)にて連載中(2018年7月現在)の「音響ワークショップ」にもフィールドレコーディングについての記事を書きました!内容は大きく変わってないですが、機材が少し変わってます。この記事はWeb版にも音声DL付きで掲載されていますので、ご興味のある方は併せてチェックしてみてください♪

ビデオSALON WEB 連載 音響ワークショップ 第5回「ハンディレコーダー活用術」

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