今回のテーマは「ルーツ」。自身の音楽的起源は何だったのかというのを改めて考えてみようと思ったのだ。この場合の起源というのは、音楽体験としてではなく、作曲家としての起源。どんな音楽に影響を受け、何からインスピレーションを受け、どんな音楽を書いてきたのか……。そのためには封印していた箱を開けなくてはならなかった。発表こそしたが、いままでほとんど人前で演奏してこなかった曲、音楽を作り始めた頃の拙い習作、そういった作品にも向き合い、思い切って晒してみようという赤面必至の試みである。

 

　過去の作品を振り返ってみると、生き物をテーマにした曲が多いことに気づいた。生き物への関心が人一倍強いという自覚はないが、可愛い生き物、美しい生き物に惹かれているのは間違いない。コンサートの第1部では、この「生き物シリーズ」をまとめてみた。おそらく、今後も増えていくことだろう。

 

　第2部は「プラス」の部分。自身の体験や妄想、心象風景や美意識を表した曲を選んでみた。割と定番化した曲も入れつつ、人前での演奏回数が少ないものを積極的にリストアップしている。美意識を前面に押し出した曲たちの大半はしっとりとした質感や翳りを宿したものが多いが、その傾向は写真などの平面作品も同傾向のようだ。いつか写真と音楽を同時発表する展覧会を開いてみてもいいかもしれない。